実際に部活動顧問を拒否できたのか?
結論から言うと、出来た※
この記事では
①なぜ拒否できるのか
②どう拒否する(した)か
という視点に絞って書いていこうと思う。多少以前の記事と内容は重複してしまうが。
ただ私は法律の専門家でないので、「出来た※」に関しては嘘は言わないが、法的な根拠については専門家から「違う」と言われてしまうかもしれないことは断っておく。
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①なぜ拒否出来るのか
公立の教師の時間外勤務は以下のように定められている。
昭和四十六年法律第七十七号 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法
第六条 教育職員(管理職手当を受ける者を除く。以下この条において同じ。)を正規の勤務時間(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)第五条から第八条まで、第十一条及び第十二条の規定に相当する条例の規定による勤務時間をいう。第三項及び次条第一項において同じ。)を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。
この場合の政令とは次を指す
一 教育職員(法第六条第一項に規定する教育職員をいう。次号において同じ。)については、正規の勤務時間(同項に規定する正規の勤務時間をいう。以下同じ。)の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務(正規の勤務時間を超えて勤務することをいい、同条第三項各号に掲げる日において正規の勤務時間中に勤務することを含む。次号において同じ。)を命じないものとすること。二 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
我々は地方公務員で各自治体の条例に影響を受ける。が、その条例もこの政令の基準に沿っていなければいけない、というのがポイントだ。
文科省のHPの資料にも以下のような記述がある
そもそも、教職員は、勤務時間の割振り等により、時間外勤務が生じないようにする必要があり、勤務時間外に業務を命ずる時には、超勤4項目に限定される。
つまり、教員に勤務時間外労働は命令できない。管理職が適切に仕事の割り振り等の管理運営を行えば、残業は発生しないからだ。だから教員の残業代用の予算は組まれていない。
ただし、修学旅行や災害などどうしても勤務時間外に働いてもらなければ行けない場合がある。勤務時間外に労働を命じておいて残業代を支払わないのは人権侵害であって憲法問題であるので、上の4点で発生する勤務時間外の労働の対価は教職調整額として支給している。だから時間外勤務を命じることができる。というロジックだ。
教職調整額や残業代に関しては以下に規定されている。
昭和四十六年法律第七十七号 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法
第三条 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。2 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。
次に部活動が先の、例外的に時間外勤務を命じられる業務(通称超勤4項目)の以下に該当するかだが
イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
これは該当しないということになっている。
部活動は学習指導要領が定める教育課程に含まれていない教育課程「外」の活動なので、法令上、学校が実施する義務はないからだ。
なので、部活動の指導監督を(すくなくとも平日の勤務時間外や土日祝日に)命令することは出来ない。
ただし、東京都は条例で学校の業務として定めている。
第十二条の十二 学校は、教育活動の一環として部活動を設置及び運営するものとする。
2 校長は、所属職員(事務職員等を除く。)に部活動の指導業務を校務として分掌させることができる。
しかし、これはあくまで勤務時間内の業務として定めたもので、勤務時間外の部活動の指導監督を仕事として位置づけたものではない。
これは東京都の教育長からそう回答を受けているので間違いない。振替休日を与えてもだ。
政令の基準である超勤4項目に該当しない部活動で勤務時間外の勤務を命じることは、政令より下位の条例では定めることが出来ないからだと思われる。
なので、東京都では17時までの部活動顧問を拒否することは出来ないが、全国どこでも17時以降や土日祝日の活動は命令されない。
(条例で定めていない自治体では勤務時間内の部活動顧問も拒否できそうだがこれは断言できない。)
部活動を拒否するのは、勤務時間外や土日祝日の際限のない奴隷労働から自分の人生を取り返すのが目的のはずだ。(対価ももらわずに労働を強制されればそれは奴隷である。)
勤務時間外の部活動を拒否できれば、この時点で十分「拒否できる」といって良い。※がついてたのはこのためだ。
そしてあなたが管理職だったら、「17時で野球部も家に帰すし、たとえ甲子園出場が決まっても土日は活動しません」と宣言するものを野球部の顧問を命じる勇気があるだろうか。
だから、東京都では書類上17時までの部活動顧問は拒否できないが、奴隷労働が発生するような部活の拒否は実質可能である。※はそういう意味だ。
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②どう拒否する(した)か
生徒・保護者に向けて公式にアナウンスされてしまう4月になってからでは遅いので、3月末日までに(顧問を決め始める2月や3月上旬が望ましい)、校長に対して、送信履歴という証拠が残るemailか、またはボイスレコーダーで証拠を残しながら口頭で以下内容を意思表示をする。
・勤務時間外や土日祝日の活動については一切協力しない。
・それを踏まえたうえで私に顧問・副顧問を割り振るのは校長の権限であり自由である。
・ただし私が勤務時間外や土日祝日の活動に協力しないことで発生する保護者や他の教員からのクレームは校長の責任で対応しろ。
・この件に関しては意思表示は終わっているので交渉は一切受け付けない。
これは条例で部活が校務として位置づけられている東京の場合で、位置づけられてない自治体ならただ「部活動には一切協力しない」と送ればよい。
大体このような内容を送りつけると校長室に呼び出されることになる。記録を残したメールでのやり取りを嫌うためだ。向こうも必死なので、なだめすかしたり、恫喝したり、なんかして引き受けさせようとするが拒否しよう。
校長室から戻ってきたらまた記録の残るメールで次のようなことを送ろう。
・交渉は受け付けないとすでに述べたので迷惑だ
・勤務時間外も活動しなければいけないとか、そういうなら根拠となる法的根拠を示せ
よくあるパターンで、生活指導部等が部活動顧問の割り振り担当になっていることがある。自分で生活指導部の担当者と交渉しろ、と教員同士で戦わせて、こちらに折れさせる作戦を取る管理職もいるが
・校内人事は校長の仕事である。私が交渉する必要はない。
とまた記録に残るメールで意思表示をしよう。
法的根拠もないのに何とかして相手に奴隷労働を押し付ける、という分が悪い戦いをしているということを、何よりも校長自身がわかっている。
こちらが引き受けなければ東京都であっても勤務時間外の部活動顧問は絶対にやらないで済む。
逆に言えば、自分から引き受けさせるためにいろんな手を使ってくるのでやりきる根性が大切だ。
私はここまでのことを本当に実行した結果、部員が少ない文化部の副顧問に割り振られ、ここ2年間は1度も勤務時間外に顧問の仕事をしたことはない。
ここまでのことをしてもなお、4月に運動部の主顧問になっていた場合は、本当に17時で帰宅させて土日も一切活動しないつもりである。
そして、こうなることを校長は知った上で顧問に割り振ったのだから、保護者から校長にクレームを入れて顧問をかえてもらえ、と部員に説明するつもりである。
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冷たいと思うかもしれないが、破綻した制度のまま放置してきた国の責任である。
フランスでは医者もストライキに参加し、手術が出来なくて患者が死んだりもする。しかしそれは、医者の労働環境を改善しなかった経営者の責任であって、その医師の責任ではない。
生徒への愛情を利用し教員の人権を侵害しながら稼動するこのシステムを支える人間もまた悪である、と私は思う。
Qui parcit malis, nocet bonis. 悪人を許す者は善人を害する。
本当に部活がすばらしい文化ならば、健全に運営されるようにシステムを整えれば済む話である。
そもそも、私は部活動をすばらしい日本の文化だとは考えていないし、生徒のためになっているとも全く思っていない。それについてはまた書こうと思う。