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メディアも報じない教員採用試験の実質の倍率

教員採用試験の倍率の低さを報じる記事を目にすることが多いと思うが、実際の倍率はさらに遥かに低いのだ。実際もうとっくの昔に手遅れといってもいい。

 

2023年4月から教壇に立つ予定の東京都の教員たちの採用試験の結果はこうなっている。(全部貼ってしまおう)

 

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/10/14/documents/11_01.pdf

 

メディアの報じ方はA/Bの項目、合格者/受験者で、例えば中高・英語の場合だと1.77倍の倍率(合格率56%)が出ていることになる。まだまだ1までは遠いので一安心である。

 

ただそれはあくまで正規採用される教員の倍率であって、実際に生徒の前に立って英語を教える可能性のある人間の倍率になると話は完全に違ったものになる。

 

ここで見るべきは一番右の”期限付き任用教諭教員名簿搭載者数"の項目である。

この期限付き任用教諭というのは、正規教員が何らかの事情で休職したりし現場に欠員が出たときに、この名簿から随時採用され、その年度が終わるまでの最大364日間の間正規教員と同じ業務を担当することになる教員のことを指している。

多くの自治体では臨時的任用教員という名前になっているはずだ。さて、数値を見ていくと、中高英語の場合

受験者415人

正規採用234人

期限付き採用64人

となっている。415/(234+64)=1.39。実際に教壇に立つ資格のある人間の倍率はこれで1.4倍にまで低下した。合格率は71%。小学校は1.2倍で82%である。

 

そして、この期限付き採用の名簿に名前を載せるかは希望制だということも忘れてはいけない。完全不合格になった117人のうち何人が期限付き採用の名簿に登載をそもそも希望しなかったかのデータは公開されていない。

 

ちなみに私の場合、2次試験で集団討論をした8人のグループの中で、合格は私1人、期限付き採用合格が6人、完全不合格1人だった(こいつはやばかった)。

 

話はここで終わらない。採用試験とはまったく別に教壇に立つルートとして産休代替と講師という制度がある。

 

 令和5年度採用 東京都公立学校臨時的任用教員・時間講師 採用候補者選考実施要項

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/recruit/teacher/files/part-time/youkou_r5_6.pdf

 

 A選考は見てのとおり、免許さえ持っていればあとは書類選考のみである(読み間違ってたら申し訳ない)。

 

ただ別に臨時的任用教員や産休代替教員を貶める意図はないし、正規採用教員のほうが常に優秀だというつもりもない。彼らがいないと学校は運営できないし、必要な存在である。

私自身も転職後に臨時的任用教諭からスタートしたが、私よりも英語力でも熱意でも劣る仕事もろくにしない正規教員にでかい面をされた挙句、その年の試験で面接で落とされて嫌な思いもした。ただ、採用試験が機能していないのだとそういう話である。

 

 

東京都の場合、期限付き採用は1次試験はせめて合格している必要があるのでまだマシである。

 

 

埼玉県の場合はさらに事態は深刻だ。臨時的任用教員の名簿に名前を載せるのには教員免許だけあればよく、採用試験を受験している必要さえないからだ。

 

私が埼玉県で勤務していたとき、鬱病で病休に入った正規教員の代わりに若い20代の臨時的任用教員が送られてきた。(私自身も臨時的任用教員だったのだが)

彼は英語教員だったが、なんと高3教科書(それもレベルも低めの)の英文が読めなかった。

話を聞くと、彼は中高と陸上をやっていて、偏差値30台の大学にもスポーツ推薦で進学をしていた。

大学は彼を大学の売名のための剣闘士として合格させていたので、彼は他の生徒が交換留学に参加している間もトラックを走っていた。

そして卒業後に彼の手には英語の免許があった。なぜならその大学は単科大学で、英語の学部しかないからだ。

そして毎年センター試験の英語レベルの教員採用1次試験、ほぼ予選である、で落ち続けていたし、その後も落ち続けたが、ともかく、書類だけ出して名簿に名前を載せ、臨時的任用教員として教壇に立ったのだった。

ちなみに埼玉県の臨時的任用教員は毎年基本的に契約が更新され、定年まで採用試験を受けずに臨時的任用教員のまま生活している者もいる。

 

彼のような例は少ないとはおもう、が、問題はそこではなく、そういった人間がフリーパスで生徒の前に立ててしまうセキュリティーホールがぽっかり開いていて、さらに今後いっそう広がっていくだろうということだ。

 

勉強ができればいい教師ではない、だが勉強ができないのに教壇に平然と立つ神経をしている人間がいい教師なはずもない

 

このようなことになっている原因は、就活市場においての教職の魅力のなさである。

 

私の勤務している学校はそこそこの進学校で、40人中2人くらいが早計上智ICU、13人くらいがMARCHに、15人くらいが日東駒専レベルに進学していく。

ただある年に教育実習生として帰ってきた生徒たちの学歴は、1番偏差値が高い大学でも帝京大学だった。

 

日東駒専はもとより、大東亜帝国クラスの大学生にとってすら、もはや教職という選択肢は割に合わないのであろう。

 

このような現実があるにも関わらず、文部科学省がつい先週発表した対策は…

 

教員採用試験、大学3年も一部受験可に 志望減に歯止め?

https://www.asahi.com/sp/articles/ASR1D6V60R1DOXIE01R.html

 

だそうである…